2024年12月12日木曜日

有用性及び非公知性を有する情報の法的保護<ノウハウ、営業秘密、特許>

法的保護を受けることができる情報とは何でしょうか。
法的保護を受ける情報であるためには、少なくとも有用性及び非公知性を有している必要があると考えられるでしょう。

すなわち、一般的に、ノウハウといわれるような自社以外で知られていない非公知の情報は法的保護を受けられる可能性があります。
その法的根拠は民法709条であり、具体的には、有用性及び非公知性のある情報をその保有者の許可を得ずに使用した結果、保有者に損害を与えた場合等、保有者は使用者から損害賠償という形で保護を受けることができると考えられます。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
しかしながら、ノウハウの法的保護としては、営業秘密や特許等のように使用の差し止めは認められないため、ノウハウの法的な保護範囲は限定的だと考えられます。

一方で、有用性及び非公知性を有する情報であって、さらに秘密管理措置が取られることで秘密管理性も有することとなると、それは営業秘密となります。
営業秘密は、不正競争防止法によって差止請求権、損害賠償、損害の額の推定等が定められています。すなわち、営業秘密の保有者は自身の営業秘密を不正使用等した者に対して、損害賠償だけでなく、差し止め請求等を行うことができます。さらに、営業秘密の不正使用等には、刑事罰も定められています。
このように、有用性及び非公知性のある情報を秘密管理という手間を加えることで、より強い保護を受けることができる情報になるといえるでしょう。

しかしながら、自社で営業秘密として管理している情報であっても、この営業秘密を他者(他社)が独自に創出して使用している場合には、この他者に対して法的措置をとることができません。すなわち、自社開発した技術情報を営業秘密としても、当該技術を独占できるわけではありません。

これに対して、非公知性を有する技術情報であれば、所定のフォーマットで特許出願することで特許の権利化ができる可能性があります。技術情報を特許とするためには、新規性(非公知性)だけでなく進歩性の要件も必要です。有用性については、技術情報であるので当然に満たしています。
技術情報を特許化できれば、他社が同じ技術を独自に開発して実施した場合でも、それが特許請求の範囲に記載されている技術範囲に含まれているのであれば、当該他者に対して権利行使が可能となります。すなわち、特許権者は、特許として技術を独占することができます。また、特許法には刑事罰も規定されています。
このように、同じ技術情報であっても、特許出願という手間を加え、さらに、特許庁での審査により特許権となれば、独占権(絶対的独占権)というより強い保護を得ることができます。なお、特許のように、技術情報を独占する手法としては例えば意匠権や実用新案権もあります。

一方で、特許権を得るための代償として、特許に係る技術を公開する必要があります。仮に特許出願をしても特許権を取得できなかったり、出願人が望む形で特許権を取得できなかったりした場合には、他者に対して不必要な技術情報の公開を行うことになり、結果的に他者を利する可能性があります。さらに、特許権は出願から基本的に20年を過ぎると、その権利が失われます。その結果、特許に係る技術は誰もが自由に実施することができるようになります。これらは、特許権という強い保護を得るというメリットに対するデメリットとなります。
なお、特許出願することでその技術情報が開示されると、当然その技術情報は非公知性を失っています。すなわち、特許出願した技術情報は基本的には営業秘密等に戻すことはできず、不可逆的な行為となります。

以上のように、情報が有用性及び非公知性を満たしてさえいれば、当該情報の不正使用による損害賠償請求程度であれば可能かもしれません。そして、同じ情報でも、適切な秘密管理措置を行うことで営業秘密としての保護を受けることができます。さらに、同じ情報が技術情報であり特許化できれば、より強い独占権を得ることができます。
このように、同じ情報(技術情報)であっても、より手間をかけることで、より強い保護を受けることができるといえるでしょう。

弁理士による営業秘密関連情報の発信