特許化ができればよいが、特許化できないのであれば秘匿化したいと考える企業も多いかと思います。
しかしながら、特許化の可否は特許庁に審査してもらわないとわかりません。
また、特許には公開制度がありますので、特許公開公報によって技術が公開されます。
ですから、審査の結果が芳しくない場合には、特許出願を取り下げることにより公開せず、秘匿化すればよいのです。
この手法として一般的に知られていることは、早期審査や優先審査を利用することです。
一般的に、特許庁における審査は審査請求から10か月程度かかります。しかしながら、早期審査や優先審査を利用すると、早ければ2~3か月で審査結果を得られます。
そこで、特許出願と同時に審査請求すると共に、早期審査や優先審査の請求をすることで、出願公開よりも前に審査結果を知ることができます。
そして、もし、審査結果が思うものと異なる場合には、当該特許出願を取り下げます。これにより、当該特許出願は公開されることなく、取り下げとなります。すなわち、特許出願の明細書等に記載の内容は秘匿化が保たれることになります。
なお、この特許出願の取り下げは、出願日から1年4か月よりも前に行う必要があります。これを超えて取り下げを行っても、特許庁が公開の準備を進めてしまい、公開されてしまいます。また、早期審査や優先審査には条件がありますので、それを確認する必要もあります。
また、早期審査等の条件を満たしていなくても、特許庁は審査請求から約10か月程度で最初のアクションを通知するので、特許出願と同時に審査請求を行うと出願日から1年4か月経過よりも前に審査結果を知る可能性があります。このため、早期審査や有セイン審査を利用しなくても、出願と同時に審査請求してもその結果に応じて、公開公報の発行前に取り下げの判断をすることもできる可能性があります。
このように、早期審査等を利用することで特許出願の結果を早期に知り、その結果によって特許出願を取り下げることで、当該技術の秘匿性を保つことができます。
一方で、機械構造は自社製品のリバースエンジニアリングが可能であるとして、営業秘密でいうところの非公知性が失われることがあります。すなわち、特許出願の取り下げを行ったとしても、製品が公知となることで秘匿性は失われる可能性があります。
そこで、特許出願の審査結果が芳しくない場合、具体的には、新規性はあるものの進歩性がないとして拒絶された場合等には、実用新案に出願変更することも検討するべきと考えます。
実用新案の存続期間は出願から10年ですが、特許出願では設計変更であるとして進歩性が認められ難い技術であっても、実用新案であれば技術評価書で進歩性が認められる可能性があります。そうであるならば、特許出願を実用新案に変更して一定の牽制力を持たせることも一案です。
なお、実用新案も公開されるので、特許以外による出願による積極的な公開を望まないのであれば、取り下げするべきでしょう。
また、出願変更が可能な期間の条件もあるので、それは考慮に入れる必要があります。
弁理士による営業秘密関連情報の発信