しかしながら、今の時代、技術開発において自社開発だけでなく、オープン・クローズ戦略、オープンイノベーション、産学連携、異業種連携等、様々な形態・選択肢が考えられ、さらに、他社の特許出願戦略も考慮して、敢えて権利化せずに公知化することや秘匿化することを深く考える必要があるでしょう。
ここで、オープンイノベーションや産学連携等の共同研究・開発等では、他社等に自社の技術を積極的に開示したり、共同研究・開発により共有となる技術情報が現れます。このとき必ず相手方と交わされるものが秘密保持契約でしょう。
では、情報を開示する相手方や共同研究・開発先と秘密保持契約を締結すれば、自社が秘匿したい情報は守れるのでしょうか?
当然ながら、決してそのようなことはなく、相手方が不注意又は意図して秘密保持義務のある情報を開示や使用した利する可能性があります。
また、共同研究・開発の相手方が大学等の研究機関であれば、論文や学会発表等により、積極的に公開することを希望するでしょう。そのような相手に対して、秘密保持契約を締結しようとしても、秘密保持期限等で合意が難しく、うまくいかないことは容易に想像できます。
さらに、海外の企業や研究機関との共同研究・開発等を行う場合も今後多くなるでしょう。 その相手方によっては「秘密」という概念が希薄な国もありますし、公的な研究機関を装っていても、その国の軍と密接な関係を有している機関もあるようです。 そのような相手方に秘密保持義務を課したところで意味はあるのでしょうか?
このように、秘密保持契約を締結したからと言って安心できるものでは決してなく、相手方と情報を共有したのであれば、その情報は漏えいする可能性は確実にあります。そのため秘密保持契約は、情報漏えいを抑制するに過ぎないと考えます。
すなわち、本当に秘密するべき情報は、他社等に開示や共有するべきではありません。
そもそも自社が秘密にしたい技術についての共同研究・開発等は行うべきではないでしょうし、共同研究・開発等をする対象も技術漏えいが生じても許容できる範囲内とするべきです。
従って、共同研究・開発等は、秘匿すべき情報が漏えいするリスクを許容できる範囲内で行うべき、すなわち、共同研究等がビジネスにもたらす利益と情報漏洩がもたらす不利益とを天秤にかけて判断するべきでしょう。
また、基礎技術開発であれば、その基礎技術までは共同研究・開発したとしても、その後の、ビジネスに直結する応用技術に関しては自社開発(独自開発)で行う、というような選択も当然にあります。
さらに、最終的に欲しい技術が複数の技術を統合したものであれば、この複数の技術を別々の相手方と共同研究・開発、又はこの一部を共同研究・開発し、これらを統合した最終的な技術は自社開発するということも考えられるでしょう。
このように、本当に秘匿化するべき技術は、他社に漏洩しないことを第一として、共同研究・開発等を推進するべきかと思います。
弁理士による営業秘密関連情報の発信