ところで、今回のゴーン氏の逮捕において司法取引もあったそうです。
日本における司法取引は三菱日立パワーシステムズ(MHPS)に続いて2回目です。
1回目、2回目共に企業が絡む事件であることが少々興味深いですね。
特にMHPSの事件は、外国公務員への贈賄という不正競争防止法違反に関するものでした。
そして、司法取引によって罪を逃れた側が、MHPSであったことからも物議を呼びました。
ここで、司法取引について少々調べてみました。
司法取引は刑事訴訟法第350条の2で規定されているようです。
そして、司法取引が可能な罪は、何でも良いのではなく、特定の罪だけのようです。
その罪は「刑事訴訟法第三百五十条の二第二項第三号の罪を定める政令」でも別途定められています。
この政令を確認すると、不正競争防止法だけでなく、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、著作権法といった知的財産の侵害の罪に対しても司法取引が可能なようです。
とはいっても、特に特許法、実用新案法は侵害罪が適用される可能性は非常に低いかと思いますが。
また、不正競争防止法が含まれているため、当然、営業秘密侵害罪も司法取引の対象となり、営業秘密侵害罪については今後、司法取引が適用されることが十分に考えられるかと思います。
例えば、転職者が前職の営業秘密を持ち出し、転職先企業も転職者の前職企業の営業秘密であることを理解して営業秘密を使用した場合でしょうか。
なお、日本の司法取引では、「他人の刑事事件」についてのみ司法取引ができるため、自分の罪に対しては司法取引ができないとのことです。
したがって、上記の例では、転職者が転職先企業の犯罪(営業秘密侵害)を明らかにする、又は転職先企業が転職者の犯罪を明らかにする、という司法取引になるのでしょう。
例えば、下記刑事事件一覧では、自動包装機械事件がその対象になり得たかもしれません。この事件では、被告企業に転職してきた被告4名と共に被告企業も刑事罰を受けています。なお、司法取引は、平成28年6月から導入されているので、この事件が明るみに出たときには司法取引をおこなうことはできませんでした。
このように、営業秘密侵害罪に対しても司法取引が可能となっています。
このため、転職に伴う営業秘密の持ち出し及び転職先での開示・使用が刑事事件化した場合、転職者又は転職先企業が司法取引に応じる可能性があります。
すなわち、転職に伴う営業秘密侵害に関して、転職者と転職先企業とがお互いがお互いを守る可能性は低いのではないでしょうか。そして何れか一方のみが罪に問われる可能性もあるということは知識として知っておいてもいいかもしれません。
弁理士による営業秘密関連情報の発信