2018年10月19日金曜日

何を営業秘密とするのか?

企業の知財関係の方と営業秘密について少々踏み込んでする話をすると、見えてくることがあります。それは、情報の秘密管理云々の前に、どのような情報を営業秘密として管理するのかが定まっていない場合があるということです。

知財関係の方と話をするので、営業秘密として管理する対象は技術情報(ノウハウ)ですが、いったいどのような技術情報を秘密管理するのか?ということが明確でない企業が多いようです。

また、企業の在り方によっても営業秘密管理するべき技術情報が異なってくるようです。
例えば、人材の流動性が高い企業や業界ほど、自社のノウハウの漏洩を厳しく管理すべきかというと、必ずしもそうではないのかもしれません。


例えば、経験のある良い人材が自社へ入社することを期待し、また、人材が自社から他社へ移ることも許容している企業にとっては、情報管理を厳しくすることは人材の流入にとってよくないと考えるかもしれません。すなわち、情報管理が厳しいということが逆に悪評となり、良い人材の流入が滞るかもしれません。
このような企業は、自社独自のノウハウに対して必要最低限の秘密管理を行う一方、例えば自社の収益には直結しないようなノウハウの流出は許容するという選択もあり得るでしょう。

一方、自社開発のノウハウの流出を最大限防止したいという企業(例えば競業他社との競争が激しく人材の流動性も高くない業界等?)は、自社開発のノウハウであれば、既に公知となっている可能性も考えられるノウハウをも秘密管理するという選択もあり得るでしょう。

さらに、自社内で創出された情報をどのレベルから営業秘密管理するのかということも大事です。
例えば、新規なビジネスモデルかもしれない漠然とした情報はどうするのか?もし、そのような情報が重要であれば、内容を特定した文章等を作成し、秘密管理するべきでしょう。
一方で、漠然としすぎており、海の物とも山の物とも分からないものは、特定も難しく営業秘密管理ができないかもしれません。そういう情報は、社外に漏れることを許容して何もしないという選択もあり得ます。

従って、企業としては、どのような情報を営業秘密管理するのかという大まかな基準を策定するべきかと思います。
そうしないと、情報に対する営業秘密管理の有無は担当者個人が有する基準に委ねられ、本来ならば営業秘密管理するべき情報が当該管理から外れたり、本来ならば営業秘密管理が不要な情報が当該管理をさせていたりするかもしれません。
もし、他の情報が適切に営業秘密管理されていたとしても、当該管理から外れた情報は営業秘密とは認められません。また、不要な情報を営業秘密管理するということは、当該情報の特定等に要するコストや作業等の無駄が生じることになります。

このように、営業秘密の特定とはとかく面倒なものです。
果たしてどのように行うべきか、また行えるのか?

弁理士による営業秘密関連情報の発信