2017年12月4日月曜日

厚生労働省「派遣元事業者のための就業規則の作成の ポイント」から気づくこと

就業規則について調べていたら、下記のような
派遣元事業者のための就業規則の作成の ポイント - 厚生労働省
というものを見つけました。
これには、「守秘義務、機密情報保持」という項目があり、詳しく解説されています。

ここで、ベネッセの事件のように、派遣社員が営業秘密を漏えいさせたことがあります。
派遣先企業は、このようなことを防止するためにも派遣社員との間で守秘義務契約等を結ぼうとすることがあります。
しかしながら、上記資料の18ページに「機密情報保持契約は、基本的に、派遣先と派遣元事業者の間、及び派遣元事業者と 派遣労働者の間で取り交わされるものです。」とあるように、基本的に派遣先と派遣社員との間で交わされるものではないようです。

このため、この資料では、派遣元事業者の就業規則における守秘義務等の例として、以下のように記されています。

(守秘義務)
第○条 派遣スタッフは、業務上知り得た秘密を他に漏らしてはならない。また、雇用契約終了後についても同様とする。

(機密情報保持)
第○条 派遣スタッフは、会社及び派遣先事業者等に関する情報の管理に十分注意を払うとともに、自らの業務に関係のない情報を不当に取得してはならない。
2 派遣スタッフは、退職に際して、自らが管理していた会社及び派遣先事業者等に関 するデータ・情報書類等を速やかに返却しなければならない。

(守秘義務)
第○条 派遣スタッフは、業務上知り得た情報や、取引先、顧客その他の関係者、会社・ 派遣先の役員・従業員等の個人情報を正当な理由なく開示したり、利用目的を超えて取扱い、又は、漏洩してはならない。会社を退職した場合においても同様とする。
2 派遣スタッフは、会社の定めた規則を遵守しなければならない。
3 会社は、必要に応じて、会社の機密情報にかかる秘密保持に関する誓約書を提出させることがある。
4 会社の業務の範囲に属する事項について、著作・講演・執筆などを行う場合は、あ らかじめ会社の許可を受けなければならない。
5 会社の機密情報とは次のものをいう。
1)会社が業務上保有している顧客の個人情報(メールアドレス、氏名、住所、電話番号等)
2)会社の取引先に関する情報(取引先会社名、住所、担当者名、取引商品等)
3)会社の企画及び商品内容に関する情報(進行中の企画内容、システムの仕様等)
4)会社の財務及び人事に関する情報
5)会社との事業提携に関する情報(提携先会社名、住所、条件等)
6)子会社及び関連会社に関する上記各号の事項  
7)その他、会社が機密保持を必要として指定した情報


ここで、前回のブログ「モデル就業規則の見直し 副業容認と営業秘密 」でも紹介した厚生労働省:モデル就業規則には、機密情報(秘密情報、営業秘密)に関する規定として、「懲戒事由」に「 正当な理由なく会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、又は業務の正常な運営を阻害したとき。」と記載されているだけであり、この派遣元事業者のための就業規則の作成の ポイントほど詳しくは記載されていません。
この違いは、この2つの就業規則を作った担当者の違いもあるのでしょうが、派遣社員が派遣先の機密情報を取り扱う可能性を考え、より詳細に作り込まれていると考えられます。

しかしながら、会社の機密情報(営業秘密)を漏えいしてはいけないことは、派遣社員であろうと従業員であろうと同じです。
そのため、派遣元事業者のための就業規則の作成の ポイントにおける守秘義務、機密情報保持の項目は、派遣事業者でない企業の就業規則においても非常に参考になるものではないでしょうか?

また、「弊社には秘密にする情報はないですよ。」と考えている方も居るかと思います。
果たしてそうでしょうか?上記例示のように、秘密情報と考え得るべき情報は種々あるかと思います。

私は秘密情報が全くない企業は存在し得ないと考えます。就業規則を見直すことによって、自社の秘密情報が何であるかを考えるきっかけにもなるのではないでしょうか。