2017年7月1日土曜日

情報を形式知化して営業秘密として管理すること

情報を営業秘密として管理するためには、その情報が特定される必要があります。
営業秘密とする情報が何であるのかが特定されていないと、例え訴訟に臨んでも秘密管理性、有用性、非公知性の判断がされないまま棄却されることになります。

営業秘密に関しては、とかく秘密管理措置が重視されていますが、営業秘密の特定(形式知化)についてはあまり語られていないと思います。
当たり前過ぎるからだとは思いますが、実際、裁判において原告が主張する営業秘密が特定されずに棄却された例が多々あります。

営業秘密の形式知化とは、営業秘密とする情報を文章化(図面も含む)することです。
文章化に限らず、動画としたり、物(生産菌)としてもいいでしょう。営業秘密とする情報を客観的に特定できればいいとおもいます。


このような話をすると、「形式知化することで逆に営業秘密が漏えいするリスクが高まるのではないか?」と危惧する人がいらっしゃいます。
確かに、考えようによってはそうかもしれません。

営業秘密を形式知化することで悪意ある者がその営業秘密を持ち出すことを容易にするかもしれません。この悪意ある者が例えば、営業秘密に対するアクセス権を有していたらなおのことです。
また、営業秘密の内容を全く知らない者が、形式知化された営業秘密を偶然に見つけて持ち出す可能性もゼロではないしょう。
営業秘密を形式知化しなければこのような持ち出しリスクは低くなるとも考えられます。

一方で、形式知化されていない情報、例えば、口頭でのみ伝えられる情報、バラバラに点在しており特定の人物しか認識できない情報、このような情報がもし漏えいした場合には、最悪の場合には漏えいした事実も検知できないでしょう。
また、何らかの方法で検知できたとしても、訴訟等においてそれが営業秘密であることの主張立証は相当難しいと思います。
当然ですね、営業秘密を敢えて特定していないわけですから。

このようなことから、情報を形式知化して営業秘密とすることは、営業秘密の漏えいリスクと営業秘密の立証容易性との間でトレードオフの関係にあると考えられるかもしれません。

では、営業秘密を形式知化して管理することによるリスクをどうやって小さくせばよいのか?
私は、従業員に対する教育や社内での管理体制の周知等でリスクを低減できると考えます。
多くの方は営業秘密を漏えいさせることによるリスク(民事的責任や刑事的責任)を明確には知っていないと思います。
もし知っていれば、ほとんどの人は営業秘密を漏えいしようと考えないと思います。

営業秘密の管理体制と従業員に対する営業秘密の教育体制、これをセットにして行うことによって営業秘密の漏えいはかなり防止できるのではないでしょうか。